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4 大凧の揚げ方

 大凧揚げの要員と揚げ方を紹介します。

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1 大凧を揚げるための要員

(1)凧の引っ立て
 10名前後 風を受けるように大凧を立てる係り。凧の頭から尻の方向へ凧を押し上げながら各人がまっすぐ前に向かって入り込んで行き、それに合わせて凧が風を受けて立って行く。引き立て(以下、現場名称に従って、「引っ立て」と呼ぶ)は最終的に、揚がった凧の尻の下から凧の後ろへ出る。
 風が弱い場合には、凧が立ち上がらずに途中で凧の下敷きになったり、凧の尻が持ち上がりきらない場合に逃げ場を失ったり、あるいは風が均等に吹かずに、凧が斜めに立ち上がった場合に逃げ場を失ったりと、最も危険が伴う係り。凧を引っ立てながら前進する際に、凧の43本の糸目に絡まる危険性もある。
 いい風の時には、凧の頭を持ち上げるだけで、引っ立てが間に合わないような速さで凧が立ち上がるが、そういうことは、そう多くはない。

(2)引っ立て指導係り
 2名 凧の正面の位置に立ち、風を読みながら、引っ立て開始の号令をかけ、引っ立ての最中には凧のバランスが左右均等になるように、引っ立ての各人に指示を出す。凧が立ち上がりきらない際には、風待ちの指示もし、凧がうまく立ち上がるように指揮をとる。

(3)凧押さえ
 10名前後 引っ立てが凧を立てる際に、凧がうまく立ち上がるように、凧の尻の部分を後ろ側で押さえる係り。立ち上がった凧を上に押し上げて、凧を引き立てながら進んできた引っ立てを凧の後ろに逃がす役割もある。やはり、凧が斜めに立ち上がったりした際には、危険が伴う係り。凧が揚がる際に凧の尾っぽにまかれる危険性もある。
また、凧を反らせている張り(鉄線)が、凧を押さえることで、瞬間的に伸びて平らになった後、凧が立ち上がるときに勢いよく元に戻るので、張りの動きに巻き込まれないように、張りの下に体を置くようにしなければならない。
 凧を立てる際、引き綱には少し余裕をもたせてあるので、凧が立って風を受けると、引き綱の余裕分だけ、凧が後ろに下がるので、その点にも注意する必要がある。

(4)トラ係り
 4名 凧の頭の左右の端についているロープ、通称「トラ」を操作する係り。凧の揚がりはじめと着地の際に、凧がまっすぐ揚がり下がりするように誘導する。揚がり出した凧の力は強力なので、摩擦で手をやけどする危険性もある。
 凧の骨に負担がかからないようにするために、トラを引く方向と引く力加減の調整が難しい。

(5)尾っぽ係り
 4名(尾っぽが2本)〜6名(尾っぽが3本) 凧が揚がりきるまでは、凧の尾っぽは地面の上を動いている。その尾っぽに凧周りの人間が絡まったりしないよう、尾っぽがまっすぐ上がっていくように誘導する係り。凧の着地の際にも、尾っぽ左右に引っ張って着地の調整をするが、風が強いときに凧を下ろす際には尾っぽ1本に6人くらいの人間が必要。それでも、凧が上空で奴を振っている際に尾っぽを持つのは危険。
尾っぽに自分自身がはたかれたり、絡まれたりする危険性がある。やはり、揚がり出した凧の力は強力なので、摩擦で手をやけどする危険性もある。
 風の具合によって、凧の前に出たり、後ろに回ったりしながら、尾っぽと凧の動きを調整する。尾っぽの本数が増えるにまして、危険性も高まる。
 大凧は、風の強さに合わせて、尾っぽの重さ、本数を調整するので、そうした際には、尾っぽの付け替えをする。

(6)糸目口
 4〜6名 糸目口とは、凧の43本の糸目を1本にまとめて引き綱につなげてある部分。どうしてもここだけが重くなるので、凧が揚がる際に、この部分を持ち上げて、糸目の縒りをほどき、凧の揚がりを助ける係り。
 凧が揚がっている時も、糸目の下で様子を見る。凧をおろす際には、糸目口を押さえ、続いて凧の頭の糸目を引いて、凧を押さえ込む。

(7)引き手
 80名 凧の引き綱を引く係り。風が強い時には比較的楽だが、風が弱いときには、引き綱を引くことで凧を揚げることになるので、大変な力が必要になる。
引き綱は、必ず逆手で持ち、風の方向に合わせて、引き綱の片側に集まり、10人くらいずつでグループを作って、引き綱を持つ。
凧が揚がってきたら、揚がり具合に合わせて、指導係の指示によって、その場で踏ん張るか、綱を放すか、あるいは綱をくれる(引き綱を送る)かする。綱を放す際には、前の方のグループから、グループ単位で順次手を放していく。綱を放したグループは、後ろに回って綱を引く。凧が揚がりきるまでそれを繰り返す。各グループの手の離し方が早すぎても遅すぎても、凧はうまく揚がらない。
凧が急速で揚がる際には、引き綱ごと宙に浮いてしまう危険性がある。また、綱をくれている際には、急速で滑り出す引き綱に足をとられる危険性もある。

(8)引き手指導係り
 1名 風の具合を見ながら、引き手の人数や引き手のグループごとの配置を指示する。凧が立ち上がったことを確認した上で、引き手に対して、引き綱を引く号令をかける。凧が揚がってきたら、引き手に引き綱を放させる指示や、綱を持ってその場で踏ん張る指示、あるいは綱をくれる(引き綱を送る)指示を出し、風を読みながら、凧をうまく揚げるための指揮をとる。

(9)元綱係り
 2名 引き綱の最後尾の管理をする。綱を引く時にも、綱をくれる(引き綱を送る)ときにも、引き手が綱に足をとられないように、管理する。綱を引いている時には、引いた分の綱を土俵の後ろ側にまとめておくための指示、管理をする。
 2名 引き綱の最後尾の管理をする。綱を引く時にも、綱をくれる(引き綱を送る)ときにも、引き手が綱に足をとられないように、管理する。綱を引いている時には、引いた分の綱を土俵の後ろ側にまとめておくための指示、管理をする。
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2 大凧を揚げる手順
(1)紙張り 
 相模の大凧は、紙が取り外せるようになっている。その日の第1回目の凧揚げの前に、16枚の紙についたひもで凧に結ぶつける。16枚の紙には、「右一」といった書き込みがあり、その順番に従って結びつけていく。だいぶ前に1枚の紙の上下を間違えて結びつけてしまい、展示用に凧を立てた状態のときに気がついて、その状態のまま、凧に後ろからのぼっていって直したことがあった

(2)待機
 大凧はかなり強い風がないと揚がらないので、強い風が来るのを待つことがしばしばある。
 しばらく風が吹かないと判断したときや凧を修理する時には、凧を寝かせておく。そのとき、2本の「トラ」を、それぞれ軽トラックに結び付け、さらに、土嚢を凧の頭と尻に置いて、凧が風に煽られないようにする。引き綱も土俵に結び付けておく。

(3)風待ち
 良い風が吹いてきて、凧が揚げられそうだと判断したら、トラを軽トラックから外し、土嚢をどかす。
この段階で、いつでも揚げられるように、トラと尾っぽの位置を調整し、糸目に乱れがないようにしておく。引き綱の位置やたるみも調整する。尾っぽの重さや本数も調整しておく。土俵の位置(本来の土俵以外に、風向きによって使用する3箇所の予備の土俵がある)も決めておく。

(4)凧を立てる
 凧揚げ要員全員が所定の位置に着く。全員の準備が完了したことを、引き手指導係と引っ立て指導係が、白旗で確認したら、それを引っ立てのリーダーに伝える。凧を揚げられれ風が来たと判断した引っ立てのリーダーの号令で引っ立てが凧を持ち上げ、凧の下に入り込みながら凧を立てて行く。
凧押さえは、凧の尻側で凧を押さえながら、引っ立てが凧を立ち上げ、凧の後ろに逃げられるようにする。

(5)引き綱を引く
 凧が立ち上がり、引っ立てと凧押さえの安全が確認された段階で、引き手指導員の号令で、引き手が一斉に引き綱を引く。凧の揚がり具合に合わせて、糸目口から順番に綱を放して行く。綱を放した引き手は、元糸方向に走って引き綱を握り、凧が揚がってきたら引き綱を放すという操作を繰り返す。
途中、凧の揚がり具合を見て、次の操作をする。
@
 引き手が引き綱を持ったままその場にとどまる。そうすることで、風を受けた凧が自分で揚がっていく(のしていく)。
A
 凧がのしたら、引き綱をくれて(引き綱を凧方向に送る)、凧がさらに高い位置にのしていくようにする。この繰返しで凧は揚がる。
B
 凧が下がってきたら、もむ(引き綱を上下に振る)か、さらに引き綱を引くかする。

<解説:m-nishiyama、写真:t-shibuya, k-taniguchi>

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