和紙の里を訪ねて 〜埼玉県秩父郡東秩父村〜 | ||||||
ここ「細川紙」の原産地は、埼玉県のほぼ中央部に位置する比企郡小川町と秩父郡東秩父村を中心とした地で、緑豊かな外秩父の山々に囲まれた盆地である。その山あいを槻川や兜川が流れ、中世では鎌倉と上州とを結ぶ鎌倉街道の要衝の地として栄えたところである。また、歴史を秘めてたたずむ史跡や往時の面影をとどめる町並みなど、その風情から、いつしか「武蔵の小京都」と呼ばれ、あかり窓の広い紙漉き屋のたたずまいは情緒ある雰囲気を醸し出していたそうだ。 |
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◆ 和紙の製造行程 ◆ |
1 | 刈り取り | 楮は11月下旬から1月にかけて刈り取る。2年以上経過した楮は繊維が硬く、節なども多いことから、良い和紙はできないいため、必ず1年ものを使う。 |
2 | 楮ひき | 蒸気蒸しと皮をむく作業のことで、刈り取った楮を一定の長さに揃え、こうぞ桶をかぶせて蒸し、その後、さめないうちに手早く黒い薄皮を剥き取り、白皮のみにする作業で、これを剥皮(はくひ)ともいう。 |
3 | 楮 煮 | 楮皮のアルカリ煮沸で、煮熟(しゃじゅく)とも言い、大きな釜にむいた白皮を入れ、ソーダ灰又は木灰で柔らかくなるまで2〜3時間かけて煮る。 |
4 | 楮さらし | 灰汁抜きとちりとり作業のことで、煮て柔らかくした白皮に残っているゴミやキズを一本一本取り除き、水と日光で自然に白くなるように晒す。 |
5 | 楮打ち | 繊維の離解分散作業で、ちりとりをした白皮を木槌で叩いて、細かく繊維をほぐす。 |
6 | 紙漉き | 細かくほぐした紙料と水、トロロアオイの根の粘液(紙料を水中で均等に分散させる働きがある)をよく混ぜ合わせて、簀桁(すけた)で一枚一枚漉き上げる。 |
7 | かんだしぼり | 湿紙層の圧搾脱水のことで、一枚一枚漉き上げた紙を積み重ね(紙床・しと)、これを上から圧力をかけて水を搾り出す。 |
8 | 紙干し | 乾燥させることで、干し板(栃や松の木など)に圧搾した紙を一枚一枚ていねいに刷毛を使って張りつけ、日光で乾燥させる。 |
9 | 紙そろい | 乾燥させた紙を一枚一枚光に透かして、厚さや色の違いや傷などを丹念に見て分類・選別をし、1帖48枚に仕切りを入れる。 |
10 | 裁 断 | 選別した和紙を、用途に合ったサイズに包丁で切る。 |
11 | 紙つくり | 選別した紙は20帖(960枚)1束とし、6束を1俵に荷造りして出荷する。紙は普通「1枚・2枚」と数え、出荷するときの単位は「帖」「束」などと数える。また、和紙の厚さを表すには、「何ミリの紙」とは言わず、「何匁の紙」と言う。細川紙の場合は、二三判(2×3尺)よりやや大きめの63cm×94cmの重さ(長さ)が基準となっているようだ。 |
紙干し | 裁断 | 紙つくり | 荷造り |
◆ 和紙の特徴 ◆ 和紙の長所のひとつに、通気性、透光性、伸縮性があげられる。 |
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千三百有余年の歴史をもち、厳しい寒さと清らかな水が生み出す芸術品であるこの地の「手漉き和紙」、先人達の弛まぬ努力と都心に比較的近いといった地理的条件、さらに原材料となる資源が豊富だったことが、伝統工芸の永い歴史を物語っていると感じる。 そして、この「細川紙」と言われる楮紙(こうぞし)は、独特の技術と丈夫で素朴な資質が賞賛され、岐阜県美濃市の本美濃紙と島根県那賀郡三隅町の石州半紙とともに日本三大和紙として国の「重要無形文化財」の指定を受けるようになった。 しかし、和紙づくりは厳しい寒さと冷たい水で質の良い紙ができ、朝早くから夜遅くまでの根気のいる仕事と言われ、今では紙漉き戸数も近在で20数軒と言われ、伝統産業の衰退を憂えるようになってきているという。 ♪♪ いやだ いやだよ紙漉きはいやだ 夜づめ 早起き 水仕事 月は傾く夜はしんしんと ふけてまだ打つ紙キヌタ・・…漉いた儲けはカンダのようにみんな問屋にしぼられる・・…♪♪ 折から時代の流れは生活様式の変化や紙需要も洋紙などに押され、さらには我が国の経済・産業構造の激変から若い後継者は他の産業に流失し、その存続さえ危ぶまれる事態となり、今では、つらい作業の合間に唄われていた「紙漉き唄」を耳にすることもないようだ。 |
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<2002年10月 文責:新戸大凧保存会 幟川泰夫、写真:新戸大凧保存会 内泰夫> |
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